2021.05.27つくし

いなくなって初めてそのありがたみが分かる事がある。

 

昨年4月に家族の一員である芝犬「つくし」が亡くなりました。

享年不明。

 

私たちが飛騨市に移住したその月のある日。

縁側の向こう側に茶色い尻尾の先が横切るのが見えた。

慌てて窓際に駆け寄ると、

そこに成犬の芝犬が我が家のように寛いでいた。

「え?」と驚いている私たちを尻目に、

もうすでに我が家のような振る舞い。

 

しかし集落の中を歩き回っていたけれど突然いなくなり、

近所の人から

「犬が県外ナンバーの車から捨てるように降ろされていた」

「保健所に連れて行かれた」と知らされた。

 

特別に動物への興味はないのだけれど、

命がぞんざいな扱いを受けたり理不尽な無くなり方をする事に対して

ものすごく憤りを感じる。

 

保健所に電話をして引き取りたいとの旨を伝え、

保健所へ向かう途中でリードを購入し、

手続きをして無事に迎える事ができました。

 

帰る途中で動物病院に寄って病気を持っていないか調べてもらい、

健康体であるというお墨付きをもらった時に年齢を聞くと

「多分7歳くらい」とのこと。

健康体でよく躾もされている。見た目も芝犬らしく凛としている。

なぜ放棄するのか分からない。

 

家族で放棄された理由をあれこれ想像してみたけれど 、

結論は「どんな理由があっても人間として許されない行為である」と言うこと。

 

それから、迎い入れた犬を「つくし」と名付け、

農園に連れていきハウス周りを散歩させる毎日。

 

マムシに足を噛まれたり蜂に鼻を刺されたりしたけれど

特に大きな病気にかかることもなく私たちを癒し続けてくれ、

やんちゃな子供にもじっと耐えて遊び相手になってもくれました。

 

 

迎い入れてから約10年。

健康体のつくしも老齢から寝ている事が多くなり、

昨年の4月2日、本当に眠るように亡くなりました。

 

亡くなって初めて、

つくしが私たちの農園に大きな貢献してくれていた事が判明。

 

というのも、

老齢のつくしがハウス周りを散歩しなくなってから、動物被害が多くなったのです。

 

私たちの農園は山からとても近く

ビニールハウスも側面はネットが張ってあるだけなので、

夜になるとハクビシンやアナグマなどの小動物が忍び込んでトマトを食べていくのです。

トマト農家の友人はハクビシンに支柱ごとトマトの樹を倒されてしまったこともあるそう。

 

昨年は動物除けの電柵を張り巡らせたのですが、

飛び越えてくるのか被害は減らず。

 

 

調べてみると、

動物対策として犬の匂いが大きな効果があり、

特に狼に一番近いと言われる柴犬の匂いが野生の動物達を忌避させるらしい。

害獣忌避の商品として「狼の尿(wolfpee)」が販売 されているくらい。

 

農家としてひよっこだった私たちにとって、

柴犬であるつくしに巡り会えたのは幸運でした。

つくしにとってはただ生きているだけ。

それでも私たちにとっては癒しだけでなく、

仕事面でも陰ながら支えになっていたことを後に実感。

 

きっと全てにおいて

存在そのものが周りに何らかの影響を与えている。

人も動物も自然も微生物も菌も。

 

周りにあるのが当たり前に感じてしまうけれど、

なくなって初めてその存在の意義を実感する事ができる。

「死」に直面して「生」を実感するように。

 

 

さてさて。

今年も電柵を張るけれど、

ご近所の柴犬達を借りてハウスの周りを散歩させようかしら。

と、本気で考えている。