2017.11.08種取り作業

だんだんと山々が紅葉してきて、

周りを見上げては「はあ~きれいだなぁ」と癒されながら作業をしています。

 

 

今年の終わりに来年に向けての大事な作業、種取りをします。

元気で実がたくさんなっていて、食味をして美味しい実がなっている樹を選抜。

毎年こうやって選抜していくことで、ここの環境に合った強いトマトになる、はず!

そしてなんとなく

真夏の実よりも、暑さ寒さを経験した時期の実から取った種の方が良い樹ができる気がする!

人間もトマトも経験豊富の方が味わい深いものになるのかも。

 

中まで真っ赤の大玉トマト「アロイトマト」。

甘味だけではなく酸味もあることで感じられる旨味を来年も引き継ぎたい!

 

ワインのような風味が女性に人気の「ブラックチェリー」。

女性を引き付ける魅力を来年も!

 

完熟しても中まで緑色の「グリーンゼブラ」。

見た目のインパクトも酸味も強め。

甘いものが多い中、じわじわと登る人気は来年に続け!

 

実のゼリー部分を含めた種を取り出します。

残りの実はあとでちゃんと食べますよ。

 

密封袋に入れて小さな泡がぶくぶくしてくるまでしばらく放置。

ゼリーが種をがっちりと守っているので、

こうすることでゼリーが種から外れやすくなります。

 

水で洗ってゼリー部分とさようなら。

今まで守ってくれてありがとう。

 

水気を切って乾かします。

完全に乾くまで日陰で一週間くらい。

 

完全に乾いたら乾燥剤と一緒に来年の春に種まきをするまで保管します。

乾かしてもその種の遺伝子は死に絶えることなく、休眠するだけ。

あぁ不思議だな。

 

こうやって引き継がれて、

そして全く同じものができるのではなく、だんだんと味が良い方に変わっていく。

なんだか、

トマト自身の『美味しくなりたい!』という思いを私たちが手伝いをしているだけ、な気がしてくる。

 

来年もそのまた次年も。

長九郎農園のトマトを食べてくれる方を笑顔にできますように!

 

2017.08.19Uターンラッシュ

お盆を過ぎてから一気に涼しくなりました。

夜、窓を開けて網戸で寝ていると寒くなるほど。

 

過ごしやすくなってきて、つくしもユキオもシャキッとしています。

 

 

農園前の田んぼの稲穂はまだ青いけれど、徐々に垂れ下がってきている。

あ~秋だなぁ。

 

毎年繰り返されるお盆の帰省ラッシュとUターンラッシュ。

その“数十キロの渋滞”というユースに身震いがする。

サラリーマン生活から脱出し一般的な休みのパターンと離れると、

少しでも人が少ない時に行動することに慣れてしまう。

 

はぁ、みなさまご苦労様です。

 

しかしかく言う当農園も只今Uターンラッシュ。

 

8月中旬現在、

トマトの樹は上を目指してぐんぐん伸び、支柱の高さを超えるほど。

 

トマトの樹は倒れないように成長の度に支柱に留めていくのだけれど、

支柱の高さを超えた樹の先端はぐわんぐわんにさらに伸びていく。

 

そのままでは収拾がつかないことになってしまうので、

ここでトマトの樹をUターンさせるのです。

 

上に伸びでいるトマトの樹の先端をぐにっと後ろに曲げるように固定します。

 

ちょっと写真では分かりづらいけれど、ちょうど背面飛びみたいな感じ。

 

後ろに曲げられた樹は折れることなく、実の重さでそのまま下に下に伸びていきます。

高下駄を履いたり梯子を使わなくても楽に収穫ができる。

 

 

トマトの育て方は千差万別。

収獲期間の長さやハウスの構造などによっても色々なやり方がある。

 

当農園はミニトマトは斜めに誘引している。

 

以前、成長が早いミニトマトの樹をUターンさせてみたら、

あっという間に裏側で樹の先端が土についてしまいジャングルと化してしまった。

 

今のところミニトマトは斜めにしているけれど、難点は収穫がしづらいこと。

どんどん実がなるので、上の実が下の実にかぶさってきてしまう。

 

なんかいい方法はないかなぁ。

 

と、毎年試行錯誤しながら育てています。

 

 

 

2017.07.15人が作るトマト

今年もいよいよ収穫が始まりそう。

ミニトマトも少しずつ色づいてきて、

 

大玉トマトもパンパンで「もうすぐだよ」っていう表情。

 

作業中に聴くのはいつもラジオ。

単純作業の時は音楽よりもラジオから流れる人の声の方が没頭できるのです。

 

先日ラジオ番組のあるコーナーに出てきたのは「工場長」という雑誌の編集長。

あらゆる職種の「工場長」について雑誌。

その中で食品工場についての話題になり、食品業界の最近の傾向について触れていた。

コンビニ業界や外食チェーンで使われる、そのまま客の口に入る形の物を作っている工場の場合。

工場はもちろんコンピュータ管理の下オートメーション化されて効率よく食品を作っているのだけど、

そこでは人がつくったようにわざと少しだけ荒くするのだそう。

 

例えばだし巻き玉子の場合。

賢いロボットたちは玉子をきれ~いに完璧に撹拌することができるのだけど、

そこで少し玉子の白身を撹拌しきれない感じに残すらしい。

そのほうが美味しそう売れるから。

こと食品に関しては完璧にきれいなものより、

そこに人の温かみを感じられるものの方が「食べたい」という気にさせるということなんだろうな。

 

野菜はどうなんだろう。

 

最近観た「最先端トマト栽培」というようなテレビ番組にて。

土を使わずに液肥で育てる工場のようなハウス。

育苗から収穫までほとんどロボットがまかなう。

実の色具合(熟れ具合)をロボットが判断し明日の収穫高を予想してくれる(ちょっといいかも)

農家(と言っていいのかな)はほとんどトマトに触らずPCの前。

 

別に

土に汚れて仕事をするのが美しい、とか

自分たちのやり方が一番!と思っているわけではなく。

食べ物に対する考え方が様々な分様々な農法があって当たり前。

私たちも今のやり方の中でどんどん最新技術を使っていきたいし

お世話にもなっている。

ただ、

昔からの農法や自然に寄り添った農法の反対側にあるのが「最先端技術」ということではないと思う。

 

食品工場のだし巻き玉子の例で言うと、

テレビで見たような野菜工場がこの先もっと増えていって、

むしろ野菜をロボットが作ることがメジャーになっていったら、

逆に『このトマトは人が作っています!』というのが売り文句になったりして。

2017.05.25身体をつくるトマト

日中、気温が高くなってきて

その分夕方が心地よく感じる季節になってきました。

 

家の周りをぶらぶらと散歩をしたり、

 

鳥や虫の音を聴きながら夕涼みをしたり。

 

「今が一番いい季節だね」という人もいるくらい。

 

種まきから約2か月。そろそろ定植の時期なってきました。

収獲の時期も遠くない。(早く食べたいなぁ)

 

現在ムスメは8か月。

ムスメに離乳食を初めて与えた時。

そのまっさらな身体に私の手を通して物が入っていき、

それが彼女の身体をつくっていく事に対して

責任がどどーんとのしかかるのを実感。

 

そして思い出す。

最近知り合ったあるシェフの言葉。

我々はお客様の命を預かっている

ストンと胸に響いた。

 

決して大げさなことではなく、

トマトという口に入れるものを提供する者として私たちも同じ意識を持っていたい。

 

嗜好のためだけに人は食べるのではなく、そもそも生きるために人は食べる。

 

お客様に食べてもらう私たちのトマトには、

身体を作っていくに値する栄養が含まれていなければいけない。

化学肥料や化学合成農薬を使わないのはそのため。

そのうえで、

どんな土で、どんな水で、どんな肥料でトマトを育てるのか日々研究。

 

 

ムスメに食べさせるのと同じ気持ちで、お客様にも提供していきたい。

 

 

 

2017.03.17終雪

娘が産まれてあっという間にもうすぐ6か月。

すくすくと大きくなり体重も出生時の2倍以上に。

 

子どもが産まれたことで自分たちが関わる社会も変わり、

同年代の子どもを持つ親御さんと交流するようになりました。

 

少ないだろうなぁとは思っていたけれど、

この町の保育園に通う子どもの人数は一桁。

小学生も十数人。

 

たくさんの同級生たちと触れ合わせたいと思わないでもない。

 

もっと人数の多い遠い保育園に通わせたり、

子どものために引っ越したりする方もいる。

それぞれの考え方を尊重するけれど。

私としては、

この子にはどんな環境でも楽しく幸せに生きる術と感性を備えてほしい。

大人になっても、どこに行っても。

 

入園や入学はまだ先だけど、

保育園や小学校を見学する機会があり、先生方とお話することもできました。

 

「人数が少ないからこそ出来ることがあるのです。」

実際に、

人数が多い学校で育った私の記憶の中の学校とはかけ離れた授業の仕方と学校の雰囲気。

大人しそうな子も活発そうな子もそれぞれのペースで楽しそうに生き生きしている。

先生と生徒の間はアットホームだけど馴れ合いではなく規律正しい。

 

人数が少ないことを弱みではなく、特色であり強みにしている。

 

弱みではなく強み。

これはこの雪国での農業も同じ。

 

今年の飛騨は雪国らしくかなりの積雪。

 

雪が降る前、こんな感じだった農園が...

 

上のアーチのちょっと下まで雪に埋もれました。

たぶん積雪1.8mくらいかな。

 

飛騨地域でも雪でハウスが潰れる被害が所々であったらしいけれど、

うちは豪雪用の太いパイプに加えてスノーポールで下から支えていたので無事でした。

ビニールを剥がしていても、

パイプの上に積もった雪の重みや、雪が溶ける力でぐにゃりと曲がってしまう。

さらさらふわふわとしたイメージの雪だけれど、ぎゅっとかたまると相当な重み。

冬は作物は何もなくても、気の抜けない時期。

 

この雪の中で作物を育てるのは無理だし、

ハウスの中に暖房を入れて育てたとしても暖房費がかかりすぎて現実的ではない。

なので、冬期はお休み。

 

「年間通して出来るといいのにね」と頻繁に言われる。

お取引している店舗さんや個人のお客さんに年中お届けできれば、と思わないでもない。

でも、

雪のために冬季期間休むことはデメリットばかりではなく、メリットもある。

 

ビニールハウスをかけていると、地面に雨があたらず土に塩分がたまってしまう。

塩分が多い土からは植物は根っこから栄養分を吸い上げることができない。

冬の間土を雪の下にさらすことで、

余分な塩分を雪解けとともにゆっくりと洗い流すことができる。

 

そして、意外にも雪が積もった下の土は凍らず一定の温度のまま。

土が凍ると微生物の活動もストップしてしまうけれど、

温度が一定の土の中で、

微生物が秋に投入しておいた有機物をゆっくりと分解し土の養分になっていく。

 

土の為だけではなく、

冬の期間を自分たちの農業を見つめなおす時間に充てることができる。

 

雪が積もることは次の年に良い実をならせるための準備。

そうして付加価値のある実にすることができれば、

冬期に休むことは弱みではなく強みになるはず。

 

子どものためにどんな環境が良いか悪いかなんて

(明らかに治安が悪いとか家庭の不仲とかでない限り)ずっと先にならないと分からない。

一般的に不利だと言われるこの環境で楽しく真摯に農業をしていく姿を子供に見せていきたいな。